題43回釜ヶ崎越冬闘争基調

43回釜ケ崎越冬闘争基調
 
 12月16日の総選挙の結果、自公政権が復活した。「生活者がキー」「コンクリートから人へ」を掲げ「政権交代」を実現した民主党ではあったが、アメリカ・財界・官僚による圧力・抵抗によって「公約」を何一つ実現できずに支持を失い、分裂を繰り返し、ついに政権の座から引きずり降ろされた。
では、単純に3年前に戻ったということであろうか。否である。
第一には民衆の「政党不信」「政治不信」が、より一層強まったということであり、「最低水準」と言われた低投票率がこのことを物語っている。
第二には選挙制度の「改革」により、二度にわたって「政権交代」が起きたことによって、政党・政治家が今まで以上に「民意」を意識せざるを得なくなったことである。増税で再可決に必要な2/3を制した(参院では過半数に達していない)とはいえ、政策ごとの協調・対立は不可欠であり、来年の参院選に向けて「政界再編」の動き「綱引き」も始まっている。
民主党政権下にあっても釜ヶ崎の政策は何一つ前進してこなかった。歴史的にみても釜ヶ崎の施策を前進させてきたのは、釜ヶ崎の団結した労働者の闘いだ。
今後とも現場での闘いがますます重要になってくる。
 
<釜ケ崎をめぐる現状>
 今年の釜ケ崎は、昨年秋の橋下市長・松井知事による「大阪グレートリセット」「西成特区」構想に翻弄され右往左往した一年であった。
 すさまじい勢いですすめられた「公務員パッシング」-労働運動破壊、マスコミを使った生活保護「不正受給」キャンペーン、この間進められてきた人権・平和教育をすすめる子供の里-「子供の家事業」への補助金の廃止が発表され、3月末での国の「緊急雇用対策基金」の期限切れ打ち切り-特掃の「月八」の廃止、更にはセンター移転のマスコミ報道によって、仲間たちの間では「特掃・シェルターが無くなるらしい」「南港臨泊が無くなるらしい」「生活保護が打ち切られるらしい」といった動揺が広がった。
 現場の役人も、ある日突然、市長が公表し、具体案の決定を押し付けられることによって、住民への説明もできず、右往左往している状態だ。
 最近になってやっと「有識者懇談会」の答申が発表されたがその内容については、具体性にとぼしく担当者ですら「どこでどう決まり、どう具体的に進めるのか」が明らかにされず、その実現にを示すものばかりか、釜ケ崎の問題の根本である失業問題-雇用対策についてはほとんどふれられていない。
 「東京を変えることが日本を変える」と都知事になった石原前東京都知事の二番煎じで「西成を変えることが大阪を変える」「大阪を変えることが日本を変える」といって、歴代の大阪市長が触れようとしなかった釜ケ崎の問題に目を向けたような姿勢を見せた橋下市長ではあったが、「既得権益にあぐらをかく公務員はタタきますが、この間施策から抜け落ちてきた西成をひいきします」という発言は「公務員バッシング」の口実、選挙目当てであったとしか考えられない。
 本当に釜ケ崎のことを考えているなら「有識者」や商店街ドヤ主だけの意見だけではなく労働者の意見・現場の意見もきくべきだ。それが弱いので「観光ガイド」「登下校の見守り」など現地の雇用には不向きな事業内容が「新たな雇用」として出てくる。そして医療センターの縮小、子供の里山王子供センターへの補助金打ち切りなど、釜ヶ崎の医療にとって最も重要なものまで縮小し、いじめや家庭内暴力からの避難所として、時代の最先端を先行的に担ってきたところが打ち捨てられてしまっている。進められた数少ない「改革」も「病院指定制度」「薬局指定制度」の導入のように、過重診療、過重投薬の根源である医療機関を問題にするのではなく、医療保護受給者の問題であるかのように、弱者の『受診する権利』を奪う形で進められている。又、越年対策の打ち切りすらみえ隠れしている。
では、どういう方向で闘うのか。
 
<釜ケ崎のかかえている問題の根本は失業問題である>
建築・土木の技術の発達・機械化、長期にわたる不況と、全社会的な派遣労働の広がり、のなかで、釜ヶ崎労働者は高齢化によって失業-野宿を余儀なくされているなかまが多い。また近年では不況の深まりの中、(新たに釜ケ崎に仕事を求めて来る)若い層にも失業-野宿の強制は進んでいる。
 今は、生活保護への包摂でその矛盾を隠ぺいしているが、こんなことはいつまでも続けられるわけがない。国は生活保護「不正受給キャンペーン」をテコに生活保護法の改悪を見据え締めつけを強めている。
 生活保護費(プラス医療費)をつぎ込み、働ける労働者から「働く意欲」を奪い、医療機関や製薬会社だけを儲けさせ、年間****円も使うなら、特掃のように高齢者には高齢者にあった社会的(公的)就労のしくみを、また若い層には若い層にあった社会的(公的)就労のしくみを作り出し、また社会的企業を育成し、公共事業でゼネコンだけがもうかる構造を変えるだけで、釜ケ崎の失業問題は解決できる。
あとは高齢化の問題と、社会から様々な理由で排除され釜ケ崎にたどり着いた仲間たちの問題だ。釜ケ崎の労働者は、歴史的に年金制度から排除されてきた。またかろうじて年金のある仲間(阪神大震災後に釜ケ崎に来た仲間、最近定年・失業によって釜ケ崎に来た仲間に多い)もほとんどが低年金で、それだけでは生きていくことができない。
「だれでも安心して老後をくらせる年金制度」を求めていくと同時に、単に生活保護に包摂するだけではなく、社会と切断し孤立させるのではなく、生きがいを持てるようなケアサービスを充実させていかなければならない。
様々な理由で社会から排除され、釜ケ崎で生活せざるをえない仲間たちの問題は、まず第一には、それぞれの地域で生活できるため、それぞれの地域でのしくみづくりを求めていくとともに、釜ケ崎で働けるしくみをつくりだしていかなければならない。
「老いも若きも安心して働き生活できる釜ケ崎」を実現しよう。
 
生活保護のしめつけを許さない>
 「仕事づくり」の闘いの不十分さから(闘争だけではなく行政に対する具体的提案も含めて)本来は生活保護ではなく「働いて生活」を望んでいる多くの仲間たちが生活保護に移行せざるをえなくなっている。釜ケ崎では9,500人の仲間が生活保護に移行し、実に全釜ケ崎労働者の 1/2 近くなっている。
「自己責任論」と「不正受給キャンペーン」をテコとして生活保護法の改悪も、もくろまれている。
一方では「ベイシックインカム」「中間的就労」の論議がはじまっており、また「税と社会保障の一体改革」が叫ばれているが、実際に先行しているのは「締めつけ」と「増税」である。
事実、医者でもないケースワーカーが、医者に「就労不可」という診断をもらった仲間に「リハビリのため数時間でも働きなさい」と、ムチャな「指導」をしたり、様々な理由をこじつけて「辞退」を強制される仲間が増えている。また「病院指定制度」「薬局指定制度」の導入によって治療の幅をせばめ、病気の悪化をも結果している。
この制度が導入された口実は「果汁診断」「過重投薬」だが、これは労働者の責任ではない。病院や製薬会社の利益のために行われたことであり、その責任は、これらと、これを許した行政にこそある。
 
<ホームレスの仲間への襲撃・虐殺を許さない>
10月13日~14日未明にかけJR大阪駅周辺で40~80代のホームレスの男性5人が相次いで襲われ、富松国春さん(67)が殺された。5人の少年(16~17才)は中学の同級生であり、府立校に通う一人を除けば無職、飲食店のアルバイト、鉄筋工だ。押収された携帯電話には暴行した動画が記録されていたといい、「ホームレスをしばきに梅田にいこう」と誰かが言い出し、「殴ったらスカッとした。楽しくて何も考えていなかった」と供述しているという。
「野宿者ネットワーック」の仲間の調査では、この間、大阪駅周辺だけではなく、野宿している仲間へのイヤガラセ・襲撃が増えており、中には「油をかけられ火をつけられた」と、一歩間違えれば死と直接結びつくようなことまで行われている。こうした事件は過去たびたびくり返されてきた。大阪だけでも1995年10月18日 藤本彰男さん(63才)が戎橋で、2000年7月22日には小林俊春さん(67才)が殺されている。
いずれの事件も「犯人」は、在特会のようにあからさまに差別と排外主義をあおる「確信犯」ではなく、どちらかといえば我々と同じような存在であり、差別・排除されてきた人間がその怒りを自分より「弱い」者に向け、ついには死にいたらしめたということであり、「いじめ」問題と同じような問題をはらんでおり、その行きつく先は在特会である。
そしてこういう事件は、社会がこわれ始めていることを明らかにするとともに、この間の「尖閣諸島」などをめぐる排外主義、愛国主義の台頭とも無縁ではなく、「自己責任論」「不正受給キャンペーン」に、その原因があるといえる。
 
<どう闘うのか>
今日本では、この間の選挙をめぐった各党の論争を見ても明らかなように、排外主義、愛国主義の大合唱だ。「尖閣諸島」をめぐっての中国での「反日運動」の高揚に対して、すべての党が「日本固有の領土」と主張し「政府のき然たる態度」を要求した。
その中身は「自衛隊によって中国漁船を追い払え」「部隊を常駐させろ」といったものから「平和的な解決を…」との差はあるものの、その意味では大差はない。より「愛国の党」をきそっているだけだ。
大日本帝国憲法」の復活、「自主憲法制定」「集団的自衛権の行使」「自衛隊国防軍化」etc,と、この間右寄りの傾向が強まっており、その行きつく先は九条改憲→戦争への道である。
 原発問題も然りである。
脱原発は空論」という主張は論外としても、多くの国民の声を無視できず「脱原発」を主張する党も、それは表面でしかない。「脱原発」とは「再稼働」や「新・増設」を認めないことであり、「廃炉」を決定し、具体的に行うこと以外にない。
更にアメリカに追随し、日本の労働者・市民を踏みにじる、TPPへの参加、沖縄への更なる基地の押し付けに反対していこう。
こうした闘いを釜ケ崎労働者の団結した闘いとして作り出していこう。その要は反失業闘争の前進だ。そして全ての闘う仲間と連帯していこう。
確かに既存の労働運動の延長ではダメだ。橋下市長の「組合つぶし」に、オレたちから見たら「白旗をかかげ」闘わずして敗れたかのようにみえる。
しかし、闘おうとする労働者は確実にいる。
また、正規労働者の中には、自分たちの利益だけを求めるのではなく、非正規労働者の権利を求める部分もいる。
「オレたちの給料が下がっても非正規を正規にしろ!」と闘う労働者もいる。
 なによりもこの間、東日本大震災、被災者支援活動や反原発闘争で出会った多くの仲間がいる。彼らは、弱肉強食の新自由主義に反対し、こわれた社会を再生し、ともに新しい社会を創り出そうとする仲間だ。
 こうした仲間たちとの団結を強めよう。
 
<第43回越冬闘争に勝利しよう>
 目前にせまった越冬闘争を闘い抜こう。
冬将軍を迎え撃ち、「仲間内の団結で一人の餓死・凍死者も出さない闘い」をやり抜こう。
釜ケ崎労働者の団結を強め、多くの仲間たちと連帯し、「老いも若きも安心して働き生活できる釜ケ崎」を実現していこう。
「安心して働き生活できる日本」を創り出していこう。
 
老いも若きも、安心して働き、生活できる釜ヶ崎をつくろう!